Wyethの光と風に惹かれて




 Andrew Wyethを初めて知ったのは私が二十歳の浪人生の頃だった。
世の中にこんな絵画があることを知った喜びは今でも爽やかな光と風のように覚えている。
それから40年以上もWyethとは違った世界を彷徨し、今再び写実の世界に没頭している。 
 Wyethの卓越したテクニックは驚愕の連続である。何気ない物や風景を素描し水彩で色彩と構図を繰り返し気の遠くなるほどの時間をかけ一つのモチーフにチャレンジしている。
素描と水彩に関しては驚く程のスピードで制作し、テンペラ画では一年に一点ないし二点のペースで制作している。Wyethの絵画で初めてテンペラ画法と云う、油彩画以前の古典技法があることを知り、当時情報の少ない中で試行錯誤してこの技法を試したこともあった。
 現在は、テンペラ絵の具と油絵の具を両方使う混合技法を試している。
この技法は、テンペラ絵の具を水で溶き、油絵の具をオイルで溶き描くと云う不思議な技法で、東洋的なものと西洋的なものとの融合であって、どこか現代の日本の有り様に似て心惹かれる技法である。
 本番の制作に入る前に正確な素描の試行と水彩での色彩と構図の試作が大量に必要だと実感したのは、恥ずかしながら本番の制作に入ってからだった!
どうしても作品制作を優先して、その作品を支える表に出ない素描や色彩の試作に重きを置いていなかったことに反省している。

今は、素描と水彩に重点を置き、基本的土台を再度勉強していると云う美術学生の心境で何時か光と風が表現できたらと制作に向かっている。

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