物語の海へ3
次に描き起こしたいのは、この物語のキワードにもなる黄花九輪桜(セイヨウサクラソウ)。
現在は試行錯誤しスケッチと着彩を繰り返している。
この花は春に咲く花で、「妖精の花」・「鍵の花」・「聖ペテロの花」とも言われている。
占星医術的には、「金星が支配し、牡牛座のもとにある」
と書いたが、薬草と占星と不思議に思うかもしれないが、西洋では17世紀頃近代医学が発達する以前には、東洋の伝統医学と同じように「全体論的」「生命中心的」である伝統的な西洋医学・医術が存在していて、その体系はギリシャ・ローマ・さらにイスラムの広範な歴史を貫いて流れてきた。
私的にはと星々の関係が壮大なロマンを連想させ創作意欲を大いに刺激してくれる。
例えばアルタミラ洞窟壁画が養老孟司氏の云うように星座を描いたものだという説に強く感銘を覚え、古代から夜空の星を眺め星座に名前を付け神話を育んできた人類の暖かい叡智に興味は尽きない。
この「物語の海へ」の切っ掛けは、確かに粘土の造形からであるが、大英博物館に展示されている「CULPEPER’S COMPLETE HERBAL」(カルペパー・ハーブ事典)を知った時から長い間、星座と植物に思いを馳せていた。
黄花九輪桜をカル・ペパー事典でも調べても出てこなかったがいろいろ調べてみてやっとカウスリップCowslipという名で表記されていたことが解った。
{COWSLIPS, PEAGLES (カウスリップス、ピーグルス)
季節 4月と5月に花が咲く
※属性と効能
金星が支配し、牡牛座のもとにある。
外用 都会の淑女たちは、この軟膏や蒸留水により美しさをますことを、あるいは少なくとも美しさが失われたときに修復してくれることをよく知っている。花は葉よりも効果が大きいが、根はほとんど役に立たない。軟膏は皮膚のシミ・シワ・日焼け・そばかすをとり、美しさを大いに増す。また熱やガスによるまひ・けいれん・神経の痛みを治す。根は背中や膀胱の痛みを和らげ、尿道を開く。葉は傷に有効で、花は震えを抑える。花は十分に乾燥ぜず暖かい場所に置いたままにしていると、すぐに腐って緑色になるので注意すべきである。一ヶ月に一度、日にあてれば、太陽にとっても花にとっても害にはならない。
脳と神経を強化して麻痺を治すため、ギリシャ人たちはこのハーブに”まひ”という名前を付けた。花を塩漬けか砂糖漬けにし、ナツメグと合わせて毎朝食べると、内臓疾患に充分な効果がある。けれども傷・しみ・しわ・日焼けに対しては、葉と豚脂でつくった軟膏を使う。}
※これは1654年に英国で出版されたカルペパーの「薬草大全」から。
また、ドルイド僧は新月の前に思慮深く、種々の呪いのもとにつんだ、セイタカサクラソウ(カウスリップス)とクマツズラ、コケモモ属、苔、クローバ、蜂蜜と一緒に醗酵させて飲み物とした。春のシンボルは北欧の神フレイヤに捧げられた。後に、古代の聖母マリアの歌にいわれるようになった。
こうして一輪の花でさへ長い時の流れの中に伝承・伝説を生み、人の病に効く力を与えてくれる!なんと自然は不思議なことだろう。
と思いつつ技量のない自分を叱咤してスケッチに着彩に日々追われています。
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